2011年に読んだ小説ベスト20

2012年4月16日 20:01 2011年に読んだ小説ベスト20

既に年が明けて四ヶ月目となり、今さら感溢れるエントリなのですが(去年、一昨年と同じ書き出し)、2011年に読んだ27冊(少なっ!)の小説の中から、面白かった小説ベスト20を決めてみました。
2011年は「本屋オフ」なるものをやってみて、本屋でぶらぶらしながら参加者それぞれがお互いに本をおすすめしあって買い漁る、ということをやったおかげで、今まで自分の選択肢になかった本を色々読めた年だなあ、という感じです。

「ベスト20」とか銘打ってるものの、相変わらず順位はかなり適当です。
まあでもこれから読む小説選びの参考にでもなれは幸いです。

ちなみに2011年はSFとファンタジーが多めだったかもしれない。本屋オフ参加者の傾向そのままですな。

20位~11位

20位
バースデイ
バースデイ
鈴木光司著。
有名な『リング』三部作のおまけ的短編集。
昔読んだときは、ブームに乗っかった蛇足、というイメージが強かったんだけど、改めて読んでみると、本作で綺麗に『リング』シリーズがまとまったな、という印象に変わった。
三つの短編のうち、最初の二作がホラーテイストで、ラストが前向きな生の物語、というのも『リング』三部作の構成と同じ。どの作品も、本編の裏側をいい感じに補完してくれていると思う。
当然ながら、読むなら先に『リング』三部作を読んでからで。
19位
鳩笛草
鳩笛草
宮部みゆき著。
超能力を持った三人の女性が主人公の三編の短編集。どれも「人とは違う力を持つことの不幸」にスポットを当てている。
『クロスファイア』を読んでいたので『燔祭』から『クロスファイア』の流れはテーマとして一貫していたんだなあ、と思った。あとの二つの作品は『燔祭』とは違って救いがあって読んでて安心した。
18位
世界の終わり、あるいは始まり
世界の終わり、あるいは始まり
歌野晶午著。
「自分の息子が連続殺人事件の犯人なんじゃないか?」と苦悩する父の葛藤を描いた、かーなり実験的な構成のミステリ。
歌野さんはこういう実験的な構成のミステリを沢山書かれているなあ。
こういう構成を貶すのは簡単だけど、歌野さんのこの手の実験的なタイプの作品には、どうしても深読みしたくなる何かがある。万人に「面白いからおすすめ!」とは決して言えないけど、色んな人に読ませて反応をうかがってみたいと思わせる。
あと、自己保身大好きな主人公に共感を覚えすぎてやばかった。
17位
放課後探偵団
放課後探偵団
相沢沙呼、市井豊、鵜林伸也、梓崎優、似鳥鶏著。
複数作家による学園物ミステリアンソロジー。
前に読んだ相沢沙呼さんの『サンドリヨン』が凄く良かったので、相沢さんの作品目当てで読んだ。
相沢さんの『チンク・ア・チンク』は『サンドリヨン』と同じく安定してるなあ、という印象。
ラストの梓崎優さんの『スプリング・ハズ・カム』は自分の年齢的なところもあってか、一番ぐっと来るものがあった。
他の作品も読んでみたい。
鵜林伸也さんの『ボールがない』の、凄く些細な謎を、ロジカルに展開した後に甘酸っぱーいオチに持っていった構成は、まさに学園物ミステリという感じでこちらも良かった。
16位
鍵のかかった部屋
鍵のかかった部屋
貴志祐介著。
『硝子のハンマー』『狐火の家』の続編にあたる、密室ミステリ短編集。
まあ普通に面白かったんだけど、『狐火の家』よりも「貴志さんならでは」な感じが薄くなって、「よくある密室物のミステリ」以外の何物でもなくなってきてるのでちょっと残念。
15位
慟哭
慟哭
貫井徳郎著。
連続幼女誘拐事件を追う刑事の物語と、心に穴を持つ男が新興宗教にはまっていく物語。
構成的にオチの想像がしやすい作品だったけど、十年前の作品だしその辺は仕方ないところもあるかな。
早い段階でオチが想像できても、最後まで惹きつけて読ませる力のある作品だと思った。
心に穴の空いた人間が新興宗教にのめり込んでしまう心理の過程の描写が非常に説得力があったなと思う。
14位
すベてがFになる
すベてがFになる
森博嗣著。
有名な作品でずっと気になってたけど、シリーズが色々出てるっぽいので今から手を出すのもなあ、と思ってたけど、読んでみたらなるほどやっぱり面白かった。いかにも理系なミステリ。
職業柄どうしてもコンピュータとかネットを扱った小説はちょっとしたボロが出ただけで冷めちゃったりするんだけど、さすがにこの人の小説にはそういうことないので安心して読めた。シリーズの他の作品も読もうと思う。
13位
家に棲むもの
家に棲むもの
小林泰三著。
ホラー短編集。
あっさり目の作品が多く、小林さんのホラー作品としては、意外性がなくてあまり驚きがなかった印象。
ホラー短編集としては同作者の『忌憶』のインパクトが凄かったからなぁ......。
でも表題作『家に棲むもの』と『食性』は良かった。『お祖父ちゃんの絵』もじわじわきた。
12位
ダークゾーン
ダークゾーン
貴志祐介著。
軍艦島を舞台にした、ファンタジーというかゲームっぽいバトルものの小説。
貴志さんの作品は相変わらず一気に読ませる力があるなあと実感。
出てくるモチーフというか諸々のキーワードが好みすぎてかなり読んでいて楽しかった。
ラストの展開にはちょっとまごついてしまうけども、エンターテイメント小説として、最後まで一気に読ませる力はほんとさすが。
11位
姑獲鳥の夏
姑獲鳥の夏
京極夏彦著。
理系っぽさと民俗学系のおどろおどろしさを兼ね備えた独特の空気を持つミステリ。
今まで何度も色んな人に勧められて気になりながらも、分厚さから敬遠していたんだけどついに読んだ。面白かった。
もっと若い頃に読んだらもっと楽しめたかもな。作品全体を覆う独特の空気が凄く好みだった。
丁寧に張られた伏線から展開していく物語も綺麗にまとまってて良かった。
ただ、伏線が丁寧過ぎて、結構先の展開が部分部分で読めてしまったのが仕方ないけどちょっと残念。

10位~1位

10位
密室殺人ゲーム王手飛車取り
密室殺人ゲーム王手飛車取り
歌野晶午著。
「試したいトリックやネタがあるから殺す」。
ただそれだけでそこに悪意や憎悪はかけらもない。そんな殺人推理ゲーム参加者達の物語。
そしてこの物語自体も「書きたいトリックやネタがあるから書いた」。という感じで、そこに深遠なテーマや問題提起があるわけではない淡々とした進行。
その自己言及的な皮肉こそがテーマなのかな、とか深読みしたくなる作品。
9位
ジェノサイド
ジェノサイド
高野和明著。
スケールのデカいエンターテイメント作品。
このスケールの物語が破綻なくまとまっている時点で凄いと思う。
場面転換が頻繁にある割に、読んでいて置いてきぼりになることもなかったし。
9.11以降の戦争を取り扱ったSF寄りの作品ということや、人類の進化が大きなキーワードである点が『虐殺器官』と重なったけど、似ているからこそ相違点が大きく浮き彫りになった印象。
こういうエンターテイメント的な作品に著者の政治的思想を持ち込むのはちょっとアレだけど、まあそこはスルーで。
8位
一九八四年
一九八四年
ジョージ・オーウェル著。
極端な監視社会を描いた古典SF。
全体主義を突き詰めていくと、人間の社会はアリやハチのような真社会性生物のような社会になっていくなあ、という妄想を読めて楽しかった。
「過去の改変」や「言語の語彙を減らすことによって思想を制限する」というアイディアは凄いなーと思った。
本編ももちろん良かったけど、巻末の『附録 ニュースピークの諸原理』は鳥肌立った。
7位
告白
告白
湊かなえ著。
かなりの話題作なので、ついつい斜に構えて読み始めちゃったけど、素直に面白いと思える作品だった。
特に第一章の完成度は見事。これだけでも短編として綺麗にまとまってるんじゃ。
全体を通しての構成も、第一章を拡大したような感じになっているし。
各章で視点の異なる一人称、という形式がうまく活きていて、人の主観は信用ならないということが表現されていたと思う。
6位
アラビアの夜の種族1 アラビアの夜の種族2 アラビアの夜の種族3
アラビアの夜の種族
古川日出男著。
アラビアを舞台にした、Wizardryっぽいファンタジー小説。
設定がいちいちツボで面白かった。
複数の主人公たちがどれも魅力的で良い。超展開の連続もとっても楽しい。
物語ることと、それを読むことを掘り下げていくと、こうなるんだな。と思った。
5位
虐殺器官
虐殺器官
伊藤計劃著。
すぐそこにある未来を描いたSF作品。
まさにこの時代だからこそ書かれた作品だなぁ、と思った。
ストーリーがどうこうよりも、「すぐそこにある未来」に適切かつ魅力的に、説得力を持たせている細かい設定の数々が読んでいて凄いと思った。
個人的には「虐殺の文法」は非常に説得力があったし説明不足では全くないと思う。
生物好きとしては「言葉」や「利他的行動」がどのように人間の中で進化したかについての著者の考えが非常に興味深かった。
4位
ハーモニー
ハーモニー
伊藤計劃著。
『虐殺器官』に引き続き「すぐ先にありそうな未来」の不気味さを丁寧に描いた作品だな、と思った。
目次や本文がいきなりxmlで書かれてるのもニヤリとさせられる演出だな、と思ってたらちゃんと意図があって、なるほど、と思わせてくれる。
社会性動物であるヒトに対して、より社会性が強まる方向に淘汰が働くと、アリやハチのような真社会性動物になっていくんじゃないか、というような妄想は生物好きなら一度はしたことある人も多いと思うけど、その手の妄想にきっちり筋道をつけてみた、という見方もあるかな、と感じた。
3位
グリーン・ワールド 上 グリーン・ワールド 下
グリーン・ワールド
ドゥーガル・ディクソン著。
何らかの理由で地球によく似た惑星に移住した一万人の人類から始まる、千年にわたる人類の歴史のやり直しと環境破壊の物語。
『アフターマン』や『フューチャーイズワイルド』で発揮された説得力ある妄想力で描かれるグリーンワールドの生態系が非常に魅力的。
非常にわかりやすい直球の問題提起なテーマだけど、序盤のグリーンワールドは想像力を刺激されて本当に魅力的だった。
関連していなさそうな各エピソードが、後で繋がっていくのも読んでいて楽しかった。
一から生態系を妄想するのは凄く大変だと思うけど、取り上げられる架空生物の種類がもうちょっと多かったらなあとも感じる。
2位
獣の奏者 1 闘蛇編
獣の奏者 1 闘蛇編
上橋菜穂子著。
序章をちらっと読んだ時点で「これは素晴らしく緻密に世界が構築された上質なファンタジーの予感がひしひしとするぜ......!」と思ったけど、一巻読みきったらやっぱり素晴らしいファンタジーだった。大好き。
生物好きとしても主人公のエリンには感情移入しまくれるし、最高。
はやく続きを読まねば。
1位
星を継ぐもの
星を継ぐもの
ジェイムズ・P・ホーガン著。
アツいな。アツいSFだぜ!!
有名な作品だけあってめちゃくちゃ面白かった。生物進化絡みのSFとか好物過ぎてもう!!
最初から最後まで延々wktkしたまま読み切った!!
なんかバカっぽい感想だけど気にしない! そんだけ面白かったってことだ!
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