2010年に読んだ自然科学系書籍ベスト20
2011年4月25日 18:16
小説ベスト50に続いて、やはり今さら感溢れるエントリなのですが(去年と同じ書き出し)、2010年に読んだ自然科学系書籍24冊の中から、面白かった本ベスト20を決めてみました。
本選びの参考にでもなれば幸いです。
比較的、古生物系の本を多く読んだ感じですかね。
一部、自然科学系というくくりで良いのか?という本もありますが、その辺はまあ適当で。
20位~11位
20位 深海のフシギな生きもの |
藤倉克則著。 ボリュームはないけど、全ページフルカラーで綺麗な写真と共に、変な深海生物を紹介していて、読んでいて楽しかった。 さっくり読むのにちょうどいい。 |
19位 絶滅した哺乳類たち |
冨田幸光、伊藤丙雄、岡本泰子著。 『絶滅哺乳類図鑑』の簡易版的位置付けらしい。 64ページと薄い図鑑なので、さらっと主要な絶滅哺乳類が確認できる。 ただ、ちょっと分類の仕方が曖昧で、表示の順番も年代がバラバラだったりして、進化と絶滅の流れがわかりにくかったかな。 |
18位 絶滅した奇妙な動物 |
川崎悟司著。 カンブリア紀~現代までの「奇妙な」あるいは「有名な」絶滅動物にフォーカスした図鑑。 何らかの動物類に特化せず、全般的に時代を追って紹介されてるので、非常に大まかな流れを掴むのには良いかも。 その一方で、魚類も哺乳類も節足動物もその他も混在してるので、特定の動物類の進化の流れを把握するのには向いてない。 情報が新しいのが良かった。 |
17位 おとぎ話の生物学 |
蓮実香佑著。 和洋様々なおとぎ話をベースに、連想ゲーム的に様々な雑学が学べる本。 タイトルに「生物学」ってある割には、それほど生物学って感じでもなかったかな。 ちゃんとした学説っぽいのと、ソースのない「都市伝説」レベルの雑学とが混在していてちょっと「ん?」ってなるところもあるけど、軽く読んで楽しめて良かった。 |
16位 琥珀 |
アンドリュー・ロス著。 琥珀がどのようにして生まれ、どこでどのようにして発見されるのか、という基礎的なところから、琥珀の中に埋もれている生物をどのようにして同定するのかという方法論まで、琥珀の入門的な内容を解説した本。 全ページフルカラーで写真が豊富なので、とてもわかりやすかった。 生物の同定方法の解説のおかげで、節足動物入門としても機能している。 |
15位 象虫 |
小檜山賢二著。 ゾウムシの写真集。 デジタル処理を施して、ゾウムシの体全体にピントが合った写真になってるので、凄く鮮明で良かった。 一口にゾウムシと言っても、非常に多様な形態の種がいて、ぼんやり眺めてるだけでも楽しい。 巻末の解説も、駆け足だけどわかり易くて良かった。 |
14位 ガラパゴス |
中村征夫著。 ガラパゴス諸島の写真集。 動物の写真が豊富で、眺めてて楽しかった。 イグアナ!ゾウガメ!アシカ!ペンギン!カツオドリ!みんな可愛いなー。 海中の生物も色々カラフルだったり変な形だったりと、多様で面白い。 |
13位 怪獣記 |
高野秀行著。 全然自然科学系ではないんだけど、便宜上(?)こちらに。 トルコのジャナワールというUMAを探しに行った取材旅行記。 軽快で読みやすい文章に惹かれて、一気にのめり込んで読めた。面白い。 ジャナワールの探索自体も非常に面白いんだけど、クルド人問題なども含め、トルコの文化というか空気というか、そういうものがわかりやすく伝わってきて、とても興味深かった。 著者が楽しみながら取材旅行をしていたのが凄く伝わってくる本でした。 |
12位 哺乳類天国 |
デイヴィッド・R・ウォレス著。 初期哺乳類の生態とか進化の歴史について書いた本だと期待して読んでみたら、古生物学者達の論争の歴史の本だった。 でも逆にこういう視点から古生物や進化学を取り上げた本ってあまりない気もするので貴重な内容なのかも。 勉強になった。 |
11位 昆虫擬態の観察日記 |
海野和男著。 昆虫の擬態は本当に興味深い。 代表的な擬態のパターン別に、わかりやすい解説と共に綺麗なフルカラーの写真をふんだんに使って紹介している本。 写真を眺めているだけで、昆虫たちの擬態の緻密さに圧倒される。 |
10位~1位
10位 ザ・リンク |
コリン・タッジ著。 メッセル・ピットという有名な化石産出地から発掘された、「イーダ」と名づけられた霊長類の全身化石を巡る話。 まず、口絵のメッセル・ピットから発掘された化石群の写真が凄まじく美しいのに惚れ惚れした。 凄い保存状態の化石だ。 イーダの系統的な位置については、これから色んな説が出てくるんでしょうね。 そういう意味ではちょっと『ヒトとサルをつなぐ最古の生物の発見』というサブタイトルはタイトル詐欺的なとこもあるけど、新生代初期の環境や、霊長類の進化についてわかりやすく解説している本として読めば良い本だったと思う。 |
9位 ダーウィン『種の起源』を読む |
北村雄一著。 ダーウィンの『種の起源』の解説書。 『種の起源』と同じ章立てで、ダーウィンの書いた内容を現在の生物進化学・分岐分類学などを元に、わかりやすく解説してくれていてありがたい。 『種の起源』に手を出す前に読んどいた方がよさげ。 去年読んだ『ダーウィンの思想』なんかもあわせて読むとさらに背景が理解しやすいかも。 |
8位 進化の存在証明 |
リチャード・ドーキンス著。 ID論者をはじめとする、進化論否定論者に対して「進化は存在するんだ」という証拠を並べ立てている本。 非常に興味深く読んだんだけど、見えない敵と戦ってる感というか、ドーキンスさんがこの本で伝えたい人にはこれ、届かないんだろうなぁ、というのが何とも。 進化の証拠を挙げるのに、これだけの分量を書かせるだけの背景が英米にあるという事実が......。 |
7位 風の中のマリア |
百田尚樹著。 スズメバチのワーカーが主人公の小説。 スズメバチをはじめとするハチの生態を凄く勉強して書かれたんだろうなあ、というのが伝わってくる内容。 ただ、小説としてガチ読みすると、虫同士の会話で「ゲノム」なんて単語が何度も出てきたり、メタな視点で血縁淘汰や系統学について虫同士で語ってるあたりで笑ってしまう。 逆に「ストーリー仕立てでスズメバチの生態を学べる入門書」的位置づけとして読めば、凄くハイレベルな作品だと思う。 なので小説ではなく自然科学系書籍としてこっちに入れました。 |
6位 ハチはなぜ大量死したのか |
ローワン・ジェイコブセン著。 蜂群崩壊症候群(CCD)の原因を追求しつつ、ミツバチをはじめとする昆虫と植物の共生や、ミツバチの生態なども詳しく解説した本。 生物ネタだけでなく、欧米の農業におけるミツバチの影響をはじめとする経済的な内容も豊富。 結局、一言「これだ」という明確な CCDの原因ははっきりしないけれども、そもそもCCD自体が一言で結論付けられない複合的な要因によるものだ、ということか。 |
5位 ゴキブリたちの優雅でひそやかな生活 |
リチャード・シュヴァイド著。 軽快な文章で、こちらに語りかけてくるような文体が非常に好印象で読みやすい。 が、題材が題材なだけにところどころがなかなかしんどい内容(笑)。 ゴキブリの生態だけでなく、ゴキブリと人間、あるいは人間社会との関係まで、丁寧に解説している。 人間にとって最も身近な昆虫のひとつであるゴキブリのことを、もっと知っておいて損はないな、と思わせる内容。 |
4位 フェルマーの最終定理 |
サイモン・シン著。 自然科学ではなく数学の本ですが、文句なしに面白かった。読んで良かった。 難しい数論自体は一般人にもわかるよう比喩で表現されて、フェルマーの最終定理に挑んだ数学者たちの試行錯誤にスポットが当てられている。 とにかく本書全体としての構成が巧みで、緻密な伏線が張られた小説のように、350年の歴史が見事にまとめられている。 理系とか文系とか関係なく一読の価値あり。 |
3位 素数ゼミの謎 |
吉村仁著。 北米には、13年あるいは17年周期で大量発生する「素数ゼミ」と呼ばれるセミがいるんですが、この素数ゼミに、どのような自然淘汰が働いて、13年・17年という素数周期で羽化するという性質を獲得したのかを、非常にわかりやすく解説した本。 一応子供向けの本だけど、大人が読んでも充分唸りながら楽しんで読める。 |
2位 恐竜の世界 |
ナショナルジオグラフィック誌に過去に掲載された恐竜関連記事をまとめた本。 色んな記事の寄せ集めの割りには、結構全体としてまとまっていた印象。 ナショジオだけあって、写真や図表、イラストが豊富なのが嬉しい。 過去100年の記事をまとめているので、最新の情報だけでなく、今までに恐竜学の「常識」がどのような変遷を遂げて行ったか、というのがよくわかる構成だった。 100年前の恐竜記事とか凄く興味深いよやっぱり。 |
1位 恐竜大図鑑 |
ポール・バレット著。 恐竜や古生物関連の本はここ数年色々読んでたけど、よく考えるといわゆる「恐竜図鑑」というものを読むのは、かれこれ20~30年ぶりくらいなのかも。 小学生の頃に読んだ子供向けの恐竜本に書かれていた「常識」がこの20~30年で覆されまくってきたことが、ありありと伝わって非常に楽しく読めた。 イグアノドンの復元図の変貌っぷりや、羽毛恐竜の発見等によって獣脚類と鳥類の関係の証拠強化とか、絶滅の原因に関する考察とか、「図鑑」という形で書かれることで「やっぱ時代が変わってるなぁ」と改めて実感した。 |
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コメント(3)
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