2009年11月の読了本まとめ

2009年12月 1日 23:59 2009年11月の読了本まとめ
スペース
スペース
加納朋子著。
数年ぶりの再読。
今までの駒子シリーズは連作短編形式だったけど、本作は中編二作の構成。
『スペース』の延々と手紙が続くくだりはさすがにちょっと退屈だったけど、最後まで読めばその構成に必然性があったのかなと思う。
駒子と瀬尾さんは、今回はどちらかというと脇役的な立ち位置だけど「他の人物の視点から見た駒子の人物像」や「瀬尾さんの過去」など、シリーズを読んできた人にはにやりとできる要素も満載。
特に、外から見た駒子の天然不思議ちゃんっぷりには、見る人によってその人となりは大きく変わるんだなあ、と色々と考えさせられた。
11月1日読了。
キーボード配列QWERTYの謎
キーボード配列QWERTYの謎
安岡孝一、安岡素子著。
タイプライターが世に生まれてから現在のコンピュータに至るまでの、キーボード関連業界の歴史をまとめた本。
結局「何故QWERTY配列が普及したのか」はよくわかったが「そもそも何故QWERTY配列が生み出されたか」は曖昧なままだった。
業界の歴史を描いた読み物としては、特許やトラストを巡るやりとりや、メーカーをバックにつけたタイピング合戦のパフォーマンスなど、非常に興味深く読めた。
ただ、全然人名や社名が頭に入って来なくて、把握するのに苦労した。
あとおまけ程度でも日本語のかな配列の由来にも言及して欲しかった。
11月4日読了。
犯人に告ぐ
犯人に告ぐ
雫井脩介著。
ミステリーではなく、一人の刑事の成長物語として読んだ。
先に映画を見ていたけど、珍しく原作より先に映像化を見ていて良かったと思えた。
一つ目の誘拐事件捜査の失敗において晒した醜態や失ったものを、二つ目の誘拐事件捜査の上で取り戻していく、という構成は、非常にわかりやすくて良かった。
植草のどうしようもない無能っぷりに苛々させられるのは、まんまと作者の思惑にはまっちゃってるんだろうな。
かなりご都合主義的ではあるものの、巻島が色んなことに落とし前をつける物語として綺麗にまとまってたと思う。
11月7日読了。
卒業
卒業
東野圭吾著。
うーん、変な学生達に全く感情移入できなくて、ストーリーとしての面白さは感じられなかった。
トリックもわざわざ図解までつけて解説してくれてるんだけど、意外感がなくて微妙。
築き上げた友情の崩壊、というテーマも、最初からあんまり友情が感じられなくて実感が湧かなかった。
期待しすぎたかな。
11月8日読了。
ニフルハイムのユリ 林友彦著。
数年ぶりに何度目かの再読。
和製ゲームブックの傑作。『ネバーランドのリンゴ』の続編。
相変わらずサドンデスの多さと「三人のティルト」というバランス調整は見事。
フィールド上をくまなく歩かないと解けない様々な謎の豊富さも健在。
ただ、こちら側の戦力がどんどんインフレしてしまって後半の戦闘に全く緊張感がないのが難点か。
独特の世界観と、優しい文体が醸し出すメルヘンな雰囲気は大好き。
続編への伏線を張りまくってるのにこれで実質シリーズ終了なのが寂しいところ。
11月16日読了。
ささらさや
ささらさや
加納朋子著。
数年ぶりの再読。
加納さんお得意の日常の謎系連作短編ミステリ。
ではあるけど、ミステリ要素はおまけみたいなもんで、主人公の「引越し先の町の人々との出会いを通しての成長物語」がメインかな。
初読時は主人公のサヤの頼りなさにイライラしてあんまり良い印象がなかった作品だったけど、自分が結婚してから読むと凄く印象が変わった。
多分子供ができたらさらに変わるんだろうなぁ。
三婆初勢揃いの『空っぽの箱』が好き。というか三婆が好き(笑)。
11月16日読了。
アリはなぜ一列に歩くか 山岡亮平著。
アリをはじめとする社会性昆虫を中心に、フェロモン等の化学物質でコミュニケーションを取る様々な生物についての本。
各章毎に別の生物の生態についてが書かれているような感じで、全体的なまとまりには欠けたけど、どの章も読んでいて非常に興味深かった。
化学的な観点からの生物へのアプローチ中心というタイプの本は今まであまり読んだことがなかったので新鮮だった。
11月20日読了。
てるてるあした
てるてるあした
加納朋子著。
不覚にも泣いた。
今まで読んだ加納さんの作品の中でも一、二を争う名作なんじゃないだろうか。
主人公・照代の年齢相応の子供っぽさは、最初はちょっとイラっとさせられるけど、この物語の中でこの子は成長していくんだろうなということがすぐに見て取れて、後は三婆やさや達と同じように照代の成長を見守る視点で楽しめた。
『ささらさや』で登場した魅力溢れる人物達がまた登場するのも嬉しかったし、ちょっとひやっとするホラーっぽい要素もスパイスが効いてて良かった。
照代を取り囲む人達の温かさにくらくらきた。
11月22日読了。
ニッポンの恐竜
ニッポンの恐竜
笹沢教一著。
恐竜の生態とかの考察を解説した本は色々読んだけど、恐竜の化石発掘や論文発表に携わる人達に関する歴史というのは全然読んだことがなかったので、非常に興味深かった。
しかも海外ではなく日本における発掘の話ということで、親近感も沸いて集中して読めた。
「研究」と「町おこし」との板ばさみ、というなかなかに解決の難しそうな問題が印象的。
近いうちに兵庫と福井の博物館には行きたい。
11月23日読了。
ありとあらゆるアリの話 久保田政雄著。
全体的に『蟻の自然誌』の内容をより一般向けに薄めた本、という印象。
復習に良かった。
あと、著者の調査や研究における体験談も結構豊富に記されているので、読んでて楽しかった。
最後の章の『アリをペットとして飼育する』を読んだら、女王含む巣丸ごと蟻を飼いたくなってしまってちょっと困った(笑)。
11月26日読了。
ある閉ざされた雪の山荘で
ある閉ざされた雪の山荘で
東野圭吾著。
メタミステリ的な作品はかなり好物なので、楽しんで読めた。
叙述トリックと設定を必然的な形で組み合わせた技量はさすがお見事!という感じ。
ただ、設定上仕方ないとは言え、登場人物それぞれの内面描写が一人を除いて皆無なので、各人物の区別が中盤までつかなくて感情移入もできず、困った。
とは言え非常に読みやすく、引き込まれてあっという間に読みきれた。
こういう作品は騙されて楽しんだもん勝ちだよね。
11月27日読了。
検屍官
検屍官
パトリシア・コーンウェル著。
ずば抜けて「ここが凄い!」っていうところはあんまりかったけど、非常に安定感のあるミステリで、ある意味安心して読めた。
情景描写が結構緻密で、洋画や海外ドラマのようなビジュアルが目に浮かぶようだった。
あと主人公ケイが政治的に追い詰められていく際の心情描写は巧みだったなぁ。
SQL云々の部分にリアリティを感じなかったのは20年近い時代差なのかな。
訳者後書きの足利事件への言及が何とも印象的......。
11月29日読了。
いま恐竜が生きていたら
いま恐竜が生きていたら
ドゥーガル・ディクソン著。
『アフターマン』をはじめ、ドゥーガル・ディクソンの一連の本は夢があって良いですね。
先日読んだ『恐竜の飼いかた教えます』と非常に似たコンセプトでどちらも比較的子供向けの内容だけど、こちらの方が読みやすさに関しては上かな?
CGとの合成写真は見てて非常にワクワクして良いです。
自分が子供の頃に読んでたら、きっと忘れられない大好きな一冊になってただろうな。
自分に子供ができたら読ませてみたい。
11月30日読了。

2009年11月の読了本は、13冊でした。
現時点で2009年に読んだ本は合計98冊。何とか目標の年間100冊は達成できそうです。

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コメント(14)

安岡孝一 [2009年12月 2日 12:19]

私たちの本を読んで下さって、どうもありがとうございます。えっと、カナ配列に関しては、以前「キー配列の規格制定史 日本編」(システム/制御/情報, Vol.47, No.12 (2003年12月), pp.559-564)という論文を書きましたので、よければ私のWWWページからごらん下さい。

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