もう一週間前の話なんだけど、大阪市立自然史博物館で開催されている特別陳列「お披露目!博物館に届いた新しい標本」を観てきました。
自然史博物館では毎年たくさんの標本を収集しているけど、そのほとんどは一般向けに展示されず、収蔵庫で保管されて、研究に利用されているそうです。
今回は、そんな標本の一部をお披露目しよう、という企画とのこと。
様々なジャンルの、多種多様な標本が展示されていました。
※なお、この特別陳列は2011年5月29日まで開催しています。
まず、展示会場のネイチャーホールに入ると、最初に目に飛び込んでくる目立つ展示が、物凄い量の日本産蝶のコレクション。
上の写真のような展示がこの三倍くらい並んでました。
同種の蝶が大量に並んでいると、なんだか凄く圧倒されます。
ぼんやり眺めてるだけでも何かの模様みたいで非常に綺麗。
蝶の標本はそれぞれ採集された市区町村別に分類されているので、資料としての価値も凄く高いんだろうなあ、と素人ながらに思いました。
膨大な蝶の標本と同じくらい目立っていたのが、鳥類の剥製コレクション。
鳥好きとしてはたまらない光景です。
西垣外正行さんという方が、個人で収集、作成された鳥類剥製コレクションとのこと。
2009年に亡くなられたそうで、コレクションの中には作成途中の剥製も含まれていました。
剥製作成の過程がうかがい知れて、作成途中の剥製もまた興味深かったです。
猛禽類かわいいよ猛禽類。
ちなみに、大阪市立自然史博物館とは関係ありませんが、同じ大阪の岸和田市にあるきしわだ自然資料館には、大量の哺乳類の剥製が展示されています。
哺乳類好きならぜひ行って見ると良いかとw
他にも、北アメリカとアフリカのイシガイの標本も面白かったですね。
イシガイは南極を除く全ての大陸に分布していて、淡水棲の貝という性質上、地理的に隔離され易いため、地域毎の多様性が高いとのこと。
確かに大きさや、貝殻の形で多様で面白い。
去年の五月に大阪湾に漂着したマッコウクジラの死体から採取した、マッコウクジラの下顎骨と歯、そして胃の内容物であるイカのクチバシ。
クジラには、プランクトン食のヒゲクジラ(歯がなく口から生えたヒゲのような器官でプランクトンなどをろ過して食べる)と、ちゃんと歯の生えたハクジラがいるわけですが、マッコウクジラは後者ですね。
胃の内容物にイカがいたことからもわかるように、もろに肉食動物ですが、意外と歯が丸っこいんだなぁ、と思いました。
なんか下顎骨と歯の組み合わせが、何かの楽器みたいです。
山梨県の南アルプス鳳凰山から採集された、大量の甲虫類の標本。
ひとつの山にこれだけ多種多様な甲虫類がいるのかと思うと、改めて甲虫類の種の豊富さを思い知らされますね。
地上にも、木の表面にも内部にも、池や川の表面にも水中にも、甲虫はどこでもいますねほんとに。
ちなみに、現在最も成功している陸生生物は昆虫だ、とはよく言われますが、その中でも最も種数が多いのは甲虫類みたいですよ。
飛ばずにじっとしてることが多いから新種を発見し易い、というのも理由の一つみたいですが。
というわけで、新種の標本も展示されていました。
さて、今回の特別陳列で個人的に一番興味深かったのは、昆虫寄生菌(いわゆる冬虫夏草)の標本。
キノコみたいなもんなんですが、普通のキノコとは違って、昆虫に寄生して、昆虫本体から養分を吸い取って成長するというなかなか恐ろしいキノコです。
左の写真は、セミの幼虫に寄生して成長するセミタケ。
昔の人はこういうのを見て「冬は虫の姿なのに、夏になると植物になって生えてくる!なにこれすごい!」と思って「冬虫夏草」と呼んだんだとか。
こちらはスズメバチの成虫に寄生するトガリスズメバチダケ。
宿主であるスズメバチの姿が、色までそのままなので非常に生々しいです。
なんとなく、動きの鈍そうな幼虫に寄生する菌というのはイメージし易いけど、ハチの成虫のような素早い虫に寄生するのはどういうルートなんでしょうね。
あと、スズメバチのような真社会性の昆虫が一体でも寄生されると、巣の中でどういう風に蔓延するのかとかも気になります。
巣が大惨事になりそうですよね。
新種かもしれないという標本も展示されていました。
動物同士の寄生や、動物が植物に寄生するというケースももちろん面白いけど、基本的には身動き取れない植物や菌類が動物に寄生する、というのは何となくホラーな感じがして面白いなあ、と今回これらの標本を見て改めて思いました。
ちょっと冬虫夏草や昆虫寄生菌関連の本をいくつか読んでみようかな。
それと、今年の夏(7/2~8/28)には大阪市立自然史博物館で特別展「来て!見て!感激!大化石展」が開催されるそうで(こちらも超楽しみにしています)、その予告として、神戸で発掘された植物化石と、孔子鳥の化石が展示されていました。
上の写真は孔子鳥の化石二種。
孔子鳥は、あの有名な始祖鳥よりちょっとだけ新しいタイプの鳥で、始祖鳥とは違って口には歯がなく、くちばしになっていますが、まだまだ恐竜っぽさを残している前肢の爪がチャームポイントの可愛い子です。
鳥類の起源が獣脚類恐竜だとする説の有力な証拠と言われている、いわゆる羽毛恐竜の化石が沢山発掘されている中国の遼寧省で、恐竜と一緒に発掘された古い鳥類化石の一つです。
鳥&恐竜好きとしては、この化石の前に立ってるだけでご飯三杯はいけるw
他にも、地質学系の資料や植物学系の標本など、ほんとに多種多様なジャンルの貴重な標本が沢山展示されていました。
2011年5月29日までやってるので、みんな観にいくといいよ!
おまけ。
常設展示も楽しいよ!
特に、恐竜をはじめ大型の古生物の化石標本が結構沢山あるので、見ていて飽きません!
自然史系の博物館は大好きなのでちょくちょく行ってるけど、今回の特別陳列の主旨なんかを元に色々改めて考えたんですが、博物館っていうのは、ある意味「博物館という大きな箱を使用したプレゼン資料」なんですよね。
なので、「これを展示した人は、膨大な資料・標本の中から、どういう意図で、この限られたスペースにこれらを選び、こういう流れの展示にしたのか」を意識して考えながら見てまわると、楽しさも理解度も深まるなー、と思いました。
僕のような講師業とか、営業とか企画とかの仕事してる人なら普段からプレゼンなんかで自分がやってることですね。