2009年に読んだ自然科学系書籍ベスト20

2010年4月22日 23:59 2009年に読んだ自然科学系書籍ベスト20

小説ベスト20に続いて、やはり今さら感溢れるエントリなのですが、2009年に読んだ自然科学系書籍39冊の中から、面白かった本ベスト20を決めてみました。
本選びの参考にでもなれば幸いです。

一部、自然科学系というくくりで良いのか?という本もありますが、その辺はまあ適当で。。

20位~11位

20位
新恐竜
新恐竜
ドゥーガル・ディクソン著。
ドゥーガル・ディクソンさんお得意の、架空博物誌シリーズの一つ。
「もし恐竜が6,500万年前に絶滅していなかったら、どのように進化して現代に至るか」をテーマに、様々な奇妙な生物が描かれている。
面白いテーマではあるものの、そもそも恐竜自体が現代の僕らにとっては不思議だらけの生き物なので、その恐竜が進化して変な生き物になりますよ、と言われてもイマイチぴんと来ないところが残念か。
とはいえ、現在哺乳類が占めているニッチを恐竜から奪えていなかったらどうなってたか、というのはなかなか興味深いです。
19位
いつか僕もアリの巣に
いつか僕もアリの巣に
大河原恭祐著。
世界中の様々な蟻の生態について、非常にわかりやすく解説している本。
親しみ易い文体と、著者のアリに対する愛がアリアリと(ここ笑うところ)伝わってきて良かった。
少々アリを擬人化しすぎている点が気になったけど、蟻本入門として非常に良い本だと思う。
18位
深海生物ファイル
深海生物ファイル
北村雄一著。
奇妙な深海生物たちが沢山載っている本。
カラーの写真が非常に豊富なので、写真を眺めているだけでも楽しい。
前半が写真、後半が文章での解説、という体裁なんだけど、後半の解説は結構あっさり目だった印象。
深海生物を深く知るには物足りないけど、取っ掛かりとしては非常に良い本だと思う。
17位
いま恐竜が生きていたら
いま恐竜が生きていたら
ドゥーガル・ディクソン著。
『新恐竜』と同じくドゥーガル・ディクソンさんで、こちらも似たようなテーマの本。
ただ、こちらは「中生代に生きていた恐竜そのものが現代に生きていたら」という、どちらかというとさらにファンタジー寄りな内容。
家畜やペット、食肉用に飼われる恐竜などなど、多分子供時代にこの本があったらのめり込んで読んでいただろうなー、という感じの内容。
将来、自分に子供ができたらぜひ読ませてあげたいと思う。
16位
フューチャー・イズ・ワイルド
フューチャー・イズ・ワイルド
ドゥーガル・ディクソン、ジョン・アダムス著。
こちらもドゥーガル・ディクソンさんお得意の架空博物誌。
現代から500万年後、1億年後、2億年後に、生物がどのような進化を遂げて、どのような生態系を構築しているのかを考察している。
同じテーマの『アフターマン』が5,000万年後に時代を絞っているのに対し、こちらは三つの時代を扱っているせいで、少々駆け足感が否めない。
各生物のカラーCGも、今となってはちょっと古臭いので、イラストのほうが良かったな、とは思う。
とは言え「その発想はなかった」と思わずつぶやいてしまうような、様々な奇妙な生物達が描かれていて、ワクワクする一冊です。
15位
鼻行類
鼻行類
ハラルト・シュテュンプケ著。
非常に有名な架空生物本。「ハナアルキ」と呼ばれる、鼻を使って歩行する変な生き物の博物誌という体裁を取って、真面目に解説している、昨今のWeb上のエイプリルフール的なノリの本。
解剖学的な専門用語が非常に多くて、ちょっととっつきにくいけど、バリエーション豊かなハナアルキたちの生態は、「ほんとにいるんじゃね?」と思わせるほどのリアリティのあるものから「それはねーよ!www」と言いたくなるようなぶっ飛んだものまで様々で、読んでて楽しいです。
14位
恐竜vsほ乳類 ビジュアル版
恐竜vsほ乳類 ビジュアル版
以前NHKスペシャルで放送された、同名のTV番組の書籍版。
ビジュアル版ということで、比較的子供向けの内容で、CGによる再現図が豊富に掲載されている。
三畳紀から白亜紀にかけての、恐竜と哺乳類の進化の歴史を、わかりやすくまとめている本。
年々「常識」が上書きされていく恐竜・古生物学関連の情報としては、比較的新しい情報が沢山載っている印象。
13位
ワンダフル・ライフ
ワンダフル・ライフ
スティーブン・ジェイ・グールド著。
カンブリア紀・パージェス頁岩生物群関連の定番本。
多様で奇妙なカンブリア紀の生物と、その発掘にまつわる歴史について、詳細に解説している。
結構古い本なので、今となっては上書きされてしまった情報も沢山あるんだろうけど、カンブリア紀の生物の不思議さを伝える上ではやはり素晴らしい本だと思う。
これを読んで、カンブリア生物と関連して、節足動物関連の知識も結構増えた気がする。
12位
ダーウィンの思想
ダーウィンの思想
内井惣七著。
キリスト教的世界観が支配し、進化論や自然淘汰なんていう考え方が明らかに禁忌だった時代に、ダーウィンがどのような思想の発展を経て自然淘汰説に辿り着き、『種の起源』を著したのかを解説した本。
特に、「精神を持った『人間』だけは特別」という無意識での区別を乗り越えて、「人間」という種を進化論という枠の中に放り込むことができた思考の過程が非常に興味深い。
11位
ありえない!?生物進化論
ありえない!?生物進化論
北村雄一著。
クジラがカバに近い生物から進化した話、恐竜から鳥に進化した話、パージェス頁岩のカンブリア紀の節足動物群を題材に、進化の歴史と、生物の分類学の手法について解説した本。
非常に文章が読みやすくて良かった。
この本のおかげで、新生代初期の哺乳類に俄然興味が沸いてきました。

10位~1位

10位
ニッポンの恐竜
ニッポンの恐竜
笹沢教一著。
正確には恐竜以外の海棲爬虫類とかも出てくるけど、日本での恐竜の化石発見・発掘や、論文発表に携わる研究者の人々に関する歴史を描いた本。
恐竜の生態とかじゃなく、こういう研究者側にフォーカスした本ってあんまりないので、非常に興味深く読めました。
「研究」と「町おこし(金儲け)」との板ばさみ、というなかなかに解決の難しそうな問題が印象深い。
9位
ハダカデバネズミ
ハダカデバネズミ
吉田 重人、岡ノ谷 一夫著。
哺乳類なのに、アリやハチのような真社会性の生活を送る、何とも不思議な生き物ハダカデバネズミの生態を解説している本。
非常にわかりやすい解説や豊富な写真が良い感じです。
また、ハダカデバネズミを研究している人たちの、飼育上の苦労話なんかも豊富で、とても楽しい。
8位
昆虫探偵
昆虫探偵
鳥飼否宇著。
ほんとは小説なので、2009年に読んだ小説ベスト30の方に載せたかったんだけど、あまりにも異色過ぎて順位がつけられなかったのでこっちに。
目覚めるとゴキブリになっていた男が主人公、というカフカの『変身』を思わせる冒頭から始まる、昆虫界のミステリ。
普通のミステリなら緻密なトリックの解明が真相に繋がる、みたいな感じだけど、本作ではその代わりに、様々な昆虫の意外な生態が事件の真相へと導いてくれる。
まともに推理小説として読むよりも、ストーリー仕立てで楽しく昆虫の生態が学べる本、という読み方をした方が楽しめると思う。
7位
恐竜の飼いかた教えます
恐竜の飼いかた教えます
ロバート・マッシュ著。
まともに解説するのも野暮なんだけど、最初から最後まで「恐竜が今でも当たり前に生きている」という前提で、普通のペットの飼いかたのハウツー本みたいなノリで、様々な恐竜の飼育方法をいかにも真面目な体裁で書いている本。
ユーモアが過ぎるので、合わない人には合わない気もするけど、ひたすらネタに突っ走るこのノリは嫌いじゃない(笑)。
6位
異端の数ゼロ
異端の数ゼロ
チャールズ・サイフェ著。
自然科学?ではない気がするけど、分類がよくわからないのでここに。
「ゼロ」という概念がどのようにして生まれたか。
そして、数学だけでなく、宗教や哲学、美術、物理学・天文学等の様々な分野にどのような影響を及ぼしたのかが記されている。
物理学関連の部分は難解すぎて僕にはほとんど理解できなかったけど、それ以外の部分は非常に興味深く読めた。
ただ、まああくまでヨーロッパ(白人)側から見たゼロの歴史だなぁ、とは思った。
5位
クマムシ?!
クマムシ?!
鈴木忠著。
「不死身の最強生物」として有名なクマムシの解説書。
とにかく著者のクマムシに対する愛というか、クマムシ研究の楽しさがひしひしと伝わってくる文章で、非常に引き込まれる。
いわゆる「不死身伝説」のウソとホントをきっちり冷静に分析・解説し、ネット上なんかでもよく言われる「不死身の最強生物」というのがさすがに誇張しすぎだということがはっきりわかった。
それでもクマムシの魅力は衰えるどころか、その奇妙な生態にさらに惹きつけられてしまう。
4位
利己的な遺伝子
利己的な遺伝子
リチャード・ドーキンス著。
やっぱりこの本は外せない。何度か読んで、ようやくしっかり頭に入ってきつつある感じ。
種でもなく、群れでもなく、個体でもなく、遺伝子レベルで自然淘汰を考える、という前提をこれでもか、というくらい丁寧に解説した本。
血縁淘汰とそれに付随する社会性昆虫の話や、延長された表現型、ESSの話なんかが興味深かった。
3位
盲目の時計職人
盲目の時計職人
リチャード・ドーキンス著。
『利己的な遺伝子』の続編的内容なので、先に『利己的な遺伝子』を読んでからの方が良いかも。
自然淘汰について、様々な比喩を用いてくどいくらいにこれでもか、と解説しまくっている本。
「目」とか、蝙蝠の超音波によるレーダーとか、アリをはじめとする社会性昆虫の複雑な社会構造とか、そういった、一見すると偶然に生まれたとは思えない、生物の持つ奇跡のような仕組みの成り立ちを、納得のいくように解説してくれるのは、圧巻の一言。
後半は、アンチ進化論者への反論に終始していて、なんかキリスト教圏でない日本人としては「見えない敵と戦ってる」モードに見えるけど、まあそれはそれで読み応えがある。
2位
蟻の自然誌
蟻の自然誌
バート・ヘルドブラー、エドワード・O・ウィルソン著。
この一年、結構色んな蟻関連書籍を読んだけど、今のところこれが最高峰。
血縁淘汰等に関する前提知識があった方が良いので『利己的な遺伝子』を読んでからの方が良いかも。
とにかく細かくわかりやすく、様々な蟻の生態を解説してくれる良書。
研究や捕獲、飼育に関する苦労話から、各種アリ達の驚くべき生態まで、見事にまとめられている。
写真やイラストも豊富なので、読んでいて様々なアリたちをイメージし易いところもポイント高い。
1位
アフターマン
アフターマン
ドゥーガル・ディクソン著。
『フューチャー・イズ・ワイルド』と同様のテーマで、5,000万年後の地球には、どのような生物が生息しているのかを考察した架空生物の博物誌。
この本はめちゃくちゃ好きで、ここ数年何度も読み返してます。
特に、自然淘汰に関しての知識をある程度得た状態で読むと、本当に楽しい。
非常に奇妙なんだけど、説得力のある生物群は、まさにサイエンス・フィクション。
各架空生物達のイラストもとても綺麗で、イマジネーションを掻き立てられます。
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