十三番目の人格―ISOLA |
貴志祐介著。
数年ぶりの再読。
貴志さんの作品の中で唯一、あんまり好きじゃない作品だったんだけど、久しぶりに読んだら結構面白かった。
神戸に住みだしてから読むと、地理関係がリアルで生々しく感じたのも一因かも。
ラストの消化不良感は好きだけど、由香里から真部への恋愛感情は唐突過ぎてやっぱイマイチ。
終盤の真部の自己犠牲も同様に唐突過ぎて説得力がないなぁ。
でもストーリー全体としてはさすがに綺麗にまとまってるなぁ。
あとやっぱ薀蓄好きだな、この人。いい意味で。
4月4日読了。 |
恐竜大図鑑 |
ポール・バレット著。
恐竜や古生物関連の本はここ数年色々読んでたけど、よく考えるといわゆる「恐竜図鑑」というものを読むのは、かれこれ20数年ぶりくらいなのかも。
小学生の頃に読んだ子供向けの恐竜本に書かれていた「常識」がこの20数年で覆されまくってきたことが、ありありとわかった非常に楽しく読めた。
イグアノドンの復元図の変貌っぷりや、羽毛恐竜の発見等によって獣脚類と鳥類の関係の証拠強化とか、絶滅の原因に関する考察とか、「図鑑」という形で書かれることで「やっぱ時代が変わってるなぁ」と改めて実感した。
4月6日読了。 |
白夜行 |
東野圭吾著。
めっちゃ分厚いけど一気に読めた。
読了してすぐ再度一から読み直したくなる作りだなぁ。
章ごとにどんどん登場人物が増えて、把握するのにちょっと苦労したのが難点か。
二人の主観描写をなくすことで、非常に効果的に二人の謎めいた関係の演出に成功していると思った。
どう見ても亮司が雪穂の手のひらの上で踊らされているだけの存在にしか見えなくて、ある意味微笑ましかったかな。
各章ごとにその年代のビッグニュースを微妙に絡ませているあたりが、時代背景を想像しやすくて良かった。
二人の主観視点での物語も見てみたいような見たくないような。
4月8日読了。 |
海を見る人 |
小林泰三著。
こういうバリバリのハードSFを読むのは久しぶりだったので最初ちょっと面食らったけど、どの短編も非常に緻密で魅力溢れる世界が描かれていて、読んでいて楽しかった。
『独裁者の掟』と『門』は構成がちょっと似てるけどどちらも凄く良かった。
『海を見る人』も切なさ乱れ撃ちで好き。
『母と子と渦を旋る冒険』のいやーな終わり方も良い。
『キャッシュ』の世界観も面白いな。他の作品もどれも魅力的な物語でした。
4月11日読了。 |
証拠死体 |
パトリシア・コーンウェル著。
そこそこ面白かったなあ、という感じ。
前作も読んだけど、ケイとマリーノ以外の登場人物を全く覚えてなかったみたい。
張り巡らせた伏線が、ラストで綺麗にまとまるのは良いんだけど、どうも謎が解けた、という爽快感がないのは犯人が主要人物じゃないからだろうな。
4月17日読了。 |
ラブレター |
岩井俊二著。
届くはずのない手紙に返事が来て......っていうようなどこかロマンチックな展開は嫌いじゃない。というか好き。
爽やかな甘酸っぱさと、厳しく過酷な現実と、両方を綺麗に描いた作品だと思う。
博子の宙ぶらりんな立ち位置が、いかにもな感じで良かった。
ただ、一人称で書かれてるのに、第三者の心理描写がちらほら出てくるあたりがそもそも文章としてどうなのよ、という点が読んでで気になって仕方なかった。
4月17日読了。 |
螺旋階段のアリス |
加納朋子著。
数年ぶりの再読。
タイトルや亜梨沙の可愛らしいキャラクター、仁木の頼りないキャラクターにうまくカモフラージュされてるけど、その核はなかなかに毒々しくて良い。
特に『中庭のアリス』『最上階のアリス』『子供部屋のアリス』の三作は、残酷なテーマを見事にオブラートに包んでいるなぁという印象。
加納さんお得意の「連作短編ならでは」のような仕掛けはあまりないけど、どの作品も気軽にさっくり読める短編ミステリとして良い感じ。
4月18日読了。 |
ハチはなぜ大量死したのか |
ローワン・ジェイコブセン著。
蜂群崩壊症候群(CCD)の原因を追求しつつ、ミツバチをはじめとする昆虫と植物の共生や、ミツバチの生態なども詳しく解説した本。
生物ネタだけでなく、欧米の農業におけるミツバチの影響をはじめとする経済的な内容も豊富。
結局、一言「これだ」という明確なCCDの原因ははっきりしないけれども、そもそも CCD自体が一言で結論付けられない複合的な要因によるものだ、ということか。
4月25日読了。 |
クローズド・ノート |
雫井脩介著。
良い意味で予定調和な物語という感じかな。
こういうストーリーには意表をつくどんでん返しは要らない。
読者が期待した通りに展開して、ほっと安心させて欲しい。
そんな風に思えた優しい小説。
雫井さんはこういう話も書かれるんだね。
4月26日読了。 |
ΑΩ(アルファ・オメガ) |
小林泰三著。
なんか凄いものを読んでしまった......という感じ。
著者の好きなものをとにかく詰め込みました!感に満ち溢れている。
序章のグロいホラーテイスト、一章のバリバリのSF、そしてギャグのような展開。まさにごった煮。
「一族」の生態というかその辺の描写は凄いな。この部分だけで濃い短編になりそうな。
ストーリー展開とか、登場人物の会話とか描写とか、ツッコミどころ満載なんだけど「特撮物を下敷きにしてる」という理由で全てのツッコミをナンセンスなものにしてしまえるのはある意味ズルいなと思った(笑)。
ガの正体は関連性が見えなくて微妙。
4月28日読了。 |
虹の家のアリス |
加納朋子著。
前作『螺旋階段のアリス』と比較すると、各編は結構おとなしい感じのテーマな印象。
全体を通して、仁木の探偵としての成長と、亜梨沙の人としての成長が描かれている感じかな。
特に亜梨沙は、仁木の視点からしか描かれないこともあって、前作では可愛らしいお人形のようなキャラクターとしてのイメージが前面に出ていたのが、内面に図太いというか毒というか、そういうものも持っているより魅力的なキャラクターとして成長が描かれているなと思った。
『鏡の家のアリス』はまんまとひっかかったな。
4月30日読了。 |
ロードス島伝説 亡国の王子 |
水野良著。
十数年ぶりの再読。
『戦記』と比べてシリアスさが増してる印象。
文章も『戦記』前半とは比べ物にならないほどこなれてきてるなぁ。
『戦記』の大物達の若かりし頃を描いているので、読んでいてやっぱり楽しい。
ただ、これ一冊ではこれといったクライマックスもなく次巻に続く、という感じなので凄く淡々としていた。
4月30日読了。 |